むし暑い季節となり、汗に悩まされる季節だと気を落としていらっしゃる方がいるのではないでしょうか?
特に、腋の汗や手の汗にお悩みの方が多いと言われています。『仕事で人前に立つと、汗が止まらずシャツがびしょびしょになる』『テスト中手に汗をかいてしまい用紙を破ってしまう』『夏場はグレーTシャツは着られない』という言葉を聞きます。汗の悩みはQOL(クオリティーオブライフ)=生活の質、に大きく影響すると言われています。汗のせいで、制限されることがある、思うような成果を出すことができないなどということがあげられます。
皮膚科では、皮膚付属器と呼ばれる、汗腺・脂腺・毛器官・爪についても診察し治療していますので、お悩みに対してお力になれることがあるかもしれません。
まず、汗は汗腺の中でも、ほぼ全身に存在するエクリン汗腺が関与し、手掌足底、腋窩に最も多く分布しています。温熱刺激、精神的緊張、味覚刺激によって発汗します。発汗は交感神経やアセチルコリンに支配されています。
今回は、この汗がたくさん出でしまう、多汗症について詳しく説明していきます。多汗症の中でも、全身性・局所性に分類され。それぞれ原発生と続発生に分かれます。今回はその中でも、原発性腋窩(えきか)多汗症について注目します。原発性腋窩多汗症は、汗の量が多くなる原因疾患や障害がないにも関わらず、左右とも温熱や精神的負荷の有無とは関係なく日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗を認める疾患です。診断には基準があり条件を満たすことで診断され、薬剤による治療の適応となります。(腋窩多汗症については、2021年5月にもブログの記事がございますので合わせてご覧ください。)原発性腋窩多汗症とエクロックゲル5% | 豊田市の皮膚科【かすがい皮膚科】 (kasugaihifuka.jp)
腋窩多汗症に対する保険適用の薬が2020年11月に発売されました。『エクロックゲル』というゲル状の製剤でした。そしてこの度新たな製剤が発売されました。『ラピフォートワイプ』という、不織布のシートで拭くようにして塗布するタイプです。どちらも、やや作用機序が異なりますが、汗を出すという指令が伝わらないようにし発汗を減らす働きをする薬剤です。
【原発性腋窩多汗症の診断基準】
シャツに汗染みができるなど、日常生活に支障をきたすほど多量の腋窩(わき)の汗が、明らかな原因がないまま6ヶ月以上みられ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合を『原発性腋窩多汗症』と診断しています。
⬜︎最初に症状がでるのが25歳以下であること
⬜︎左右両方で同じように発汗が見られること
⬜︎睡眠中は発汗が止まっていること
⬜︎1週間に1回以上多汗の症状がでること
⬜︎家族にも同じ疾患の患者さんがいること
⬜︎わき汗によって日常生活に支障をきたすこと
【原発性腋窩多汗症の重症度評価(HDSS)】
以下の①〜④の中からあてはまる症状を選ぶ方法で、自覚症状を基に重症度を評価できます。
①発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
②発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
最後に、それぞれの製剤の特徴です。
○エクロックゲル
・ゲル状の製剤
・ポンプタイプのボトルに薬剤が入っており、付属のアプリケーターを使用することにより、直接薬剤を触れることなく塗布することが可能
・12歳以上に適応
○ラピフォートワイプ
・ワイプ製剤
・1回分ずつ個包装
・9歳以上に適応
原発性腋窩多汗症でお悩みの方は、10人に1人いらっしゃると言われています。しかし、この疾患での受診経験者はそのうちの4.4%という結果からわかるように、受診率が低いのです。日常的だから…、昔からずっとそうだから…と治療を諦めている方、汗に効く薬があるなんて知らなかったという方がおみえでしたら一度ご相談ください。実際にお使いになった患者様からは、脇汗が改善されてよかったなどたくさんのお喜びの声をいただいております。