今回はアトピー性皮膚炎の治療薬で初の生物学的製剤 「デュピクセント」 について説明します。
デュピクセントはアトピー性皮膚炎の皮疹・痒みの原因を直接ブロックする注射薬です。 アトピー性皮膚炎はアトピー要因や皮膚のバリア機能低下などを背景にアレルギー性・非アレルギー性の炎症が起こる湿疹・皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎の原因はまだ明らかではありませんが皮膚のバリア機能が低下しやすい体質やアレルギー疾患を発症しやすいアトピー素因が原因のひとつと考えられています。
アレルギー疾患を発症しやすい体質を持つと血中IgEが増加しやすくアレルギー反応が起こりやすくなっています。 またアトピー性皮膚炎では水分保持 (保湿)に関わるセラミドの減少・フィラグリンの異常が認められる為、皮膚の乾燥 (ドライスキン) 被刺激性亢進 抗原や微生物が侵入しやすく この時皮膚の内部では正常な皮膚に比べTh2細胞という免疫細胞が増えた状態になってく炎症を起こしやすくなっています。 そしてTh2細胞が産生する 「IL-4」と「IL-13」 という物質 (サイトカイン)は炎症を起こしたり痒みを誘発したり皮膚のバリア機能に大切なフィラグリンという物質の発現を低下させたりします。 炎症と掻破行為は皮膚バリア機能低下をさらに助長し難治性の病態を形成します。
デュピクセントは 「IL-4」 と 「IL-13」 (サイトカイン)の働きを直接抑えることで、 T h2細胞による炎症を抑制する新しいタイプの薬です。 アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、 痒みなどの症状や皮疹などの皮膚症状を改善します。
【適応患者 (以下の項目全てを満たす患者)】
・15歳以上のアトピー性皮膚炎の方
・IGAスコア3以上、EASIスコア16以上または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する体表面積に占めるアトピ ー性皮膚炎病変の割合が10%以上
・ステロイド外用剤・プロトピック軟膏などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分効果が得らず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲の及ぶ
・定期通院が出来る方 ・自己注射が出来る方
★デュピクセント投与開始後も基本外用療法の併用が必要になります。
【投与に注意が必要な方】
・寄生虫感染のある方
・生ワクチンを接種する予定の方
・妊婦・妊娠している可能性がある方 授乳中の方
・高齢の方
・喘息等のアレルギー性疾患をお持ちの方
【副作用 】
・過敏反応 (ふらつき 息苦しさ 心拍数上昇嘔吐皮膚の痒みや赤みなど)
・注射部位反応 (注射部位の発疹・腫れ・痒みなど)
・ヘルペス感染
・結膜炎
【投与方法 】
初回は600mg (2本)、 2回目以降は300mg (1本) を2週に1回皮下注射します。
※デュピクセント投与に当たる治療費は高額となります。 経済的な負担を軽減するためにさまざまな医療費助成制度があります。
【当院のデュピクセント導入の流れ】
①医師による診察
初診時から投与することはできません。デュピクセントを投与する際には皮疹がどのくらい重症化しているか、あらかじめスコア化する必要があります。そのため、これまでにどのような治療を行ったか、どのくらいの期間治療を続けてきたか、その結果どのような変化がみられたかを診察し、これらの情報をもとに、適応と判断された方のみ次回受診時以降に投与が可能となります。適応がある場合は、次回平日午前中に来院いただき、経過を判定するための採血や症状の写真撮影をします。
また医療費助成制度を利用すると自己負担額を抑えることができます。患者様ご自身でご加入の健康保険組合にて高額療養費限度額認定書の取得、付加給付制度の確認をお願いします。確認後電話にて注射1回目の受診予約をおとり下さい。
②自己注射1回目
院内で看護師が2本注射します。
動画を見ていただき、自己注射の方法を説明しながら注射します。
冷蔵した薬剤を45分以上かけて常温に戻す必要があるため必ず予約が必要です。
次回は2週間後に受診していただきます。
③自己注射2回目
院内で看護師が1本注射します。
次回は2週間後に受診していただきます。
④自己注射3回目以降
自己注射は2回以上当院にて自己注射指導を行い、問題なく投与ができることを確認させていただいた後に導入を勧めさせていただきます。自己注射が可能となれば院外処方となり、自宅にて自己注射を行っていただきます。その後も患者さんの状況に合わせ、適宜自己注射指導を行っていきます。
はじめは「やりたいけど自信がない」「注射が怖い」とおっしゃられる方がほとんどですが、当院ではペン型デバイスによる注射のため、「針先を見ずに押し付けるだけで注射ができ、思ったよりも簡単にできた」「肌がきれいになって人前に出ることへの抵抗がなくなった」とのお声も聞いています。
興味のある方は診察にてご相談ください。