こんにちは、かすがい皮膚です。
今回のブログは、皮膚科の治療では欠かすことのできない外用薬、つまり塗り薬についてです。
かすがい皮膚科では、みなさんに安心し適切に塗り薬を使用していただくため、実際に塗りながら説明をすることを大切にしています。薬の種類や疾患の症状によって塗るタイミングや回数は異なるため、指示通りに使用することを前提とし塗り薬の基本についてQ &A形式でご紹介いたします。
どれくらいの量を塗ればいいの?
一般的に、チューブ型の軟膏を大人の人差し指先端から第一関節まで出した塗り薬の量が約0.5gにあたります。(口径の大きさは種類があり、厳密には口径5ミリの場合が相当します)「1FTU(フィンガーティップユニット)」と呼ばれており、1FTUで大人の手の平2枚分の面積に塗る目安とします。、ローション剤では一円玉の大きさが1FTUになります。
広い場所に塗る場所は1FTUを目安にして量を決めます。狭い範囲に塗る場合は患部よりも少し広めに塗り、塗った後の皮膚が少し光って見える程度が適量です。また、容器に入ったものは、大豆1個分が1FTUに相当します。
塗り方のポイントは?
まず、塗り方には『塗布』と『塗擦』があります。塗布とは、優しく皮膚表面に塗り薬を塗り広げます。対して、塗擦とは、皮膚に擦り込む方法です。皮膚科で処方される塗り薬のほとんどは塗布する薬です。強くこすって塗ると皮膚にダメージを与えてしまいますので、擦り込むのは避けましょう。
腹部や背部・腕や下肢など身体の広い部位に塗る場合は、2、3箇所点々と塗り薬を置きそこから優しく広げていきます。
優しく広げるにも効果的な方法があります。皮膚の表面には、多数の溝があります。この溝は皮溝と呼ばれ、身体の各部位により一定方向に決まっています。例えば腕では肘から手首の長い縦方向ではなく、横方向に皮溝がみられるため横に外用薬を塗り広げます。
2種類以上の塗り薬の塗り方は?
軟膏やクリームが複数処方されている場合では、医師から指示された順序を守って塗って下さい。特に指示がなかった場合では、一般に塗る面積の広い方から先に塗ります。
ステロイド外用剤と保湿剤の併用では、塗る面積の広い保湿剤から先に塗り、後からステロイド外用薬を湿疹等の患部に塗ります。
塗り薬を塗った後すぐに服を着ても大丈夫ですか?
薬を塗ってすぐに服を着ても、何も問題はありません。湿疹などで悪化している部分は薬の吸収も早いので、服につくことはあまり気にしないでしっかりと必要量を塗ってください。
補足で説明しますと。
皮膚に塗った薬が、皮膚が染みこんでいくルートには主に3ルート(毛包汗腺ルート、細胞間ルート、角質細胞ルート)あります。1番早い浸透ルートである毛包汗腺ルートには軟膏を塗って1時間後には吸収が確認されており、2・3時間後には角質層などの表皮を通過して真皮まで軟膏は到達しています。軟膏を塗布して3時間後には血液中まで到達して、腎臓を経由して尿中から排泄されることも確認されています。
これらのことから、皮膚に塗った軟膏は、1~2時間程度で皮膚の奥の方まで染み込んでいきます。薬が落ちてしまったからといって、効き目がなくなるわけではありませんのでご安心ください。
お薬の塗り方一つで経過にも影響します。
正しい塗り方を覚えていただき、少しでも早く皆さんの症状が軽快するようお手伝いしたいと思っております。
分からない事、心配な事がありましたらいつでもスタッフにお尋ねください。
参考文献:皮膚科学 看護スキルアップシリーズ➁たった20項目で学べる外用療法