今回は単純ヘルペスのPlT療法についてお話しします。

単純ヘルペスとは…?
単純ヘルペス（口唇ヘルペス・性器ヘルペス）は、単純ヘルペスウイルスに感染することで発症します。このウイルスは、一度感染すると生涯にわたって神経に潜伏します。
そして、風邪などによる発熱や疲労、寝不足など、免疫が低下する要因をきっかけに、ウイルスの活動が始まり症状があらわれます。また他にもストレス、外傷、強い日焼け、月経などもきっかけとなります。

日本には、口唇ヘルペスの患者さんが 約1,285万人いると推定され、大半の方が年1回以上再発しています。
最初に唇にチクチク・ピリピリという違和感が
あった後、痛みを伴う⽔ぶくれが数個でき、
３〜５⽇程度でかさぶたになって治る、
という経過をたどります。
⽔ぶくれなどの症状がでている時期は、
直接触れたり、唾液などから
他⼈にうつしてしまうリスクがあるので、
チクチク・ピリピリという違和感があったら
すぐに対処することが⼤切です。

単純ヘルペスの治療法は、大きくわけて3つあります。
①水ぶくれができる前の初期症状（ピリピリ・チクチクなど）を感じたときに開始する治療法（PIT*)*PIT: Patient Initiated Therapy
②水ぶくれができた後の治療法
③水ぶくれができることを抑制する治療法（再発抑制療法*)*性器ヘルペスが対象です。

治療には、ウイルスの増殖を抑える抗ヘルペスウイルス薬を使用します。
潜伏しているウイルスを追い出せるお薬はまだありません。

単純ヘルペスは、くり返し再発するため、あらかじめお薬を処方しておいてもらい、初期症状(ピリピリ、チクチクするような違和感）が出たときに、患者さん自身の判断ですぐに抗ヘルペスウイルス薬を服用する治療法があります。
この治療法をPIT（ピーアイティー）といいます。PITは、神経でウイルスが増殖し始めたところですぐにお薬を服用することで、ウイルスが増えすぎる前に増殖を抑えられるため、症状が治まるまでの期間を短くすることができます。
《⽇常⽣活での注意点》
○口唇ヘルペスの症状がでている時は、患部を清潔に保つため、⽯けんや洗顔料をよく泡⽴てて、やさしく洗いましょう。
ただし、⽔ぶくれの中にはウイルスが多く含まれていますので、患部に触れたあとは、⼿指を⽯けんできれいに洗いましょう。
○周りにうつさないために、タオルやコップは共⽤しないようにしましょう。マスクの使⽤も、感染予防に効果的です。また、⾚ちゃんとの接触はできるだけ避けてください。⾚ちゃんにうつると、重い症状を起こすおそれがあります。⾚ちゃんのお世話をする時は、⼿をきれいに洗い、キスやほおずりなどで患部が接触しないように注意しましょう。
○悪化させないためにスキンケアやメイクをする場合は、刺激になることもありますので、患部は避けてください。また、傷痕が残るリスクがありますので、かさぶたは無理に取らないようにしましょう。
○ 口唇ヘルペスの再発を予防するために、栄養のバランスがとれた⾷事と⼗分な睡眠、適度な運動により、疲れやストレスを溜めないようにしましょう。疲れている時や体調がすぐれない時は、強い紫外線を浴びる屋外でのレジャーは控えましょう。

医療機関を受診するときに症状がなくても、口唇ヘルペスや性器ヘルペスと診断されたことがあり、自分で初期症状がわかる患者さんであれば、お薬を処方してもらえる場合があります。
症状が出たときにすぐに医療機関を受診できない方や、あらかじめお薬を準備しておきたい方などは、お気軽にご相談ください。