今流行りのキャンプ、バーベキュー、避暑地を求めて森や川に行ったり、夏は楽しいことがいっぱいですね!でも、実は夏の屋外には『マダニ』が潜んでいることもあります…。
当院にも「突然ホクロができたと思ってよく見たらマダニだった」「皮膚にマダニがついてて気持ち悪くて自分で取ってしまった」「マダニって調べたら怖い感染症がいっぱい載ってた」などマダニに噛まれて診察に来る患者さんが毎年この時期いらっしゃいます。今日はマダニについてお話をします。
〈マダニとは〉
マダニの多くは春から秋(3~11月)にかけて活動が活発になりますが、冬季も活動する種類もいます。
マダニ類の成虫は体長2~3mm前後のものが多いが、若虫はそれより小さく、幼虫は1mm以下の大きさです。いずれも吸血することによって大きくなりますが、大型のマダニ類の刺症では、皮膚に吸着して数日間吸血を続けることで10mm以上に膨大する場合があります。
吸血性マダニ類は主に山林内のササ類や山間部の草地、民家の裏山、裏庭、畑、あぜ道などに生息し、野生の鹿やイノシシ、ネズミなどに寄生しています。しかし、人が通るとそれを察知して素早く衣類に付着し皮膚を這い回って適当な部位に吸着して吸血し、満腹して飽血状態になると自然に脱落します。
〈噛まれた場合の対処方法〉
マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から、長いものは10日間以上)吸血しますが、咬まれたことに気がつかない場合も多いです。吸血中のマダニに気が付いた際、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりするおそれがあるので、医療機関に受診しましょう。
受診時には野外活動の日付、場所、行動などを問診時にお伝え下さい。
〈マダニに噛まれると…〉
マダニに刺された部位は自覚症状がほとんどないので気付かず、数日間の吸血でマダニが膨大してからようやく気がつくことが多いです。
刺咬部位周囲に紅斑や浮腫、出血、水疱が見られることがあります。
マダニは上記のような皮膚炎を起こすだけでなく、ダニ媒介感染症といって病原体を保有するダニに噛まれることによって感染症を引き起こすこともあります。
①日本紅斑熱
日本紅斑熱はチマダニ類が媒介するリケッチア感染症で刺されてから2〜8日後に頭痛、倦怠感、発熱などを発症し高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足などに発症します。
②ライム病
ライム病はシュルツェマダニが媒介するボレリア感染症で感染から数日〜数週間後でマダニの刺咬部を中心に現れる遊走性紅斑、インフルエンザ様症状(頭痛、発熱、関節痛、筋肉痛など)を伴うことがあり、感染から数週間〜数ヶ月後に病原菌が全身に播種し、神経症状や皮膚症状、循環器症状などを引き起こします。
③重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ブニヤウイルス科フレボウイルス属のSFTSウイルスが感染することでおきます。
6日〜14日程度の潜伏期間を経て発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)を主張とし時に腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴います。
治療は対症療法しかありません。
ただし、全てのマダニがウイルスや細菌を持つわけではないので、必ず感染症になるわけではありません。
〈予防の対策〉
予防できるワクチンはなく、野外活動などの際にマダニに刺されないよう防ぐことが重要です。
◎身を守る服装、行動
・首にはタオルを巻くかハイネックシャツを着用
・シャツの袖口は軍手や手袋の中に入れる
・シャツの裾はズボンの中に入れる
・ズボンの裾は靴下、長靴の中に入れる
・服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすいため)がお薦め
・ディートの含まれた虫よけ剤を使用する
・上着を脱いで草むらに置いたり、腰をおろしたり、寝ころんだりしないようにする
・明るい色の服を着る
◎帰宅後
・上着や作業場は家の中に持ち込まない。
・野外活動後はシャワーや入浴でダニが付いてないか確認
特に特に、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭HP部(髪の毛の中)などがポイントです。
〈参考文献〉
・Dr夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 皮膚炎をおこす虫とその生態/臨床像・治療・対策 夏秋優
・厚生労働省HP マダニ媒介感染症