こんにちはかすがい皮膚科です。今日は皆さんも一度は耳にした事があるかと思います、『肝斑』についてお話をしていきます。コロナ禍において新しい生活様式として欠かすことのできないマスク着用も肝斑の悪化に影響しています。
肝斑とは、色素異常症に分類されるシミの一種です。この色素異常症とは、人の皮膚の色の決定に大きく影響を与えるメラニンが何らかの原因で減少する、またはこのようなメラニンを産出するメラノサイトが存在しない【色素脱失症】と、反対にメラニンが増加する【色素増加症】に分類され、シミはこの色素増加症に属します。メラニンは主に表皮の一番下にある基底層に存在する色素細胞のメラノサイト内で産生されます。産生されたメラニンは、本来は通常の表皮のターンオーバーによって角質とともに垢として排出されますが、過剰に作り出されたメラニンはターンオーバーとともに排出しきれずに残ってしまいます。
一般的にシミを主訴とされる方は、色素増加症のうちの老人性色素斑・肝斑・雀卵斑(そばかす)であることが多いです。
肝斑は、後天性の色素増加症で、20歳代後半~40歳代の女性に好発します。特徴は、老人性色素斑が境界明瞭で左右非対称なのに対して、肝斑は境界が比較的不明瞭で顔の両側に左右対称に淡褐色斑を生じます。おでこ、口周りに広がることもありますが、目の周囲には認めません。
肝斑の原因は明らかではありませんが、紫外線暴露、性ホルモン、経口避妊薬の内服、妊娠、摩擦刺激が発症要因や悪化因子とされています。紫外線や摩擦により角化細胞に異常がおこると、過剰にメラニンが作り出されます。またエストロゲン・メラノサイト刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモンがメラニン合成活性化因子であるため、妊娠、経口避妊薬の内服によって増悪し、閉経後には自然に減弱することがあります。
色素増加症で生ずる色素斑に対しての治療の多くは保険適用外です。「シミを美容のレーザーでとりたい」という声をよく耳にするのですが、現段階では肝斑に対して美容レーザー治療は第一選択とはなりません。 第一選択となるのは内服治療で、同時に外用療法を併用することも可能です(保険適応外です)。内服療法は、メラニンの生成を抑制するトラネキサム酸、美白・抗酸化作用のあるビタミンC、血流改善・抗酸化作用のあるビタミンEの内服。外用療法は、美白外用剤のハイドロキノン、高濃度ビタミンCローション等がおすすめです。美容施術としてトラネキサム酸イオン導入、ケミカルピーリングがあります。
一方で、雀卵斑、老人性色素斑は美容のレーザー治療の適応(保険適応外)となるのですが、肝斑が混在していることも多く、その場合はまず肝斑の治療をしてからレーザー治療を開始していきます。多種類のシミを見分けるには、悪性疾患のこともよくあるため、一度皮膚科専門医を受診されることをおすすめします。
最後に、さまざまなシミの予防、悪化を防ぐために今日から実践できる日常生活の工夫についてご案内いたします。
①紫外線対策
紫外線は、メラニン増加の原因となります。そのため、日焼け止めの適切な使用、日傘や帽子を使用し日焼けを予防しましょう。毎日マスクを着用していますが、マスクの素材は紫外線を透過するものがほとんどです。マスクの着用では紫外線対策とはならないという前提で、日焼け止めの内服や塗布をオススメします。
②摩擦対策
お顔は、化粧、クレンジング、スキンケアと1日に何度か皮膚に触れる機会があります。ゴシゴシと擦っているつもりはなくとも、摩擦刺激となっている可能性があります。クレンジングはジェルやクリームタイプを優しく馴染ませましょう。(ふき取りのクレンジングはやめましょう)
洗顔はしっかりと泡立て泡を転がすようにしましょう。化粧水はパッティングせず、優しく手のひらで馴染ませましょう。乳液、クリームは擦り込まず、擦らないようにたっぷりつけましょう。紫外線を防ぐ目的の日焼け止めも優しく擦らずつけなければ悪化につながります。
実は、毎日の新しい生活に欠かせないマスクも、同じところに当たる摩擦刺激を起こす原因の一つです。素材を柔らかいものにする、肌に触れるところに柔らかいガーゼを挟むなど考慮しましょう。
このように、ご自身でできる対策を行い、肝斑悪化の要因を排除していきましょう。原因を取り除いた上での治療が有効であり、再発を防いでいくことができるのです。ぜひ自身の生活を見直してみてください。新型コロナウイルスが終息し、マスクのない生活がかなった時、シミのない自分に出会えるかも知れませんね。