※上記症例以外も皮膚に関するお悩みは
お気軽にご相談ください。
アトピー性皮膚炎とは皮膚の乾燥やバリア機能の障害といった皮膚の生理学的異常により、様々な物質に対して刺激反応やアレルギー反応を起こしやすくなり、慢性的な炎症とかゆみを伴う皮膚疾患です。かゆみに我慢できず皮膚を掻くことで皮膚のバリア機能が低下し、更に炎症とかゆみが増すといった悪循環が起きます。増悪と軽快を繰り返す特徴があります。
アトピー性皮膚炎の症状の特徴としてはその他に、左右対称に症状が現れることや年齢によって症状が現れやすい部位や特徴が異なります。
治療のゴールは症状がないか、あっても軽快で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に達し、それを維持することであるとアトピー性皮膚炎診療のガイドラインでも提唱されています。
<アトピー素因>
アトピー性皮膚炎を発症する患者さんの多くは、アトピー素因を持っていることが多いとされています。アトピー素因の定義は下記になっています。
①両親や兄弟などの血のつながりのある親族がアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎等)を持っている場合や、既往歴がある。
②アレルギー反応を引き起こすIgE抗体を産生しやすい。
<悪化因子>
アトピー性皮膚炎の悪化原因にもなる肌のバリア機能の低下ですが様々な外的環境に影響を受けます。
肌が乾燥するとかゆみが生じますし、発汗は皮膚を湿らせたとしても汗に含まれる物質によってアレルギー反応を起こしアトピー性皮膚炎が悪化します。皮膚の汚れは表皮細胞の分化を阻害するため肌のバリア機能を低下させます。その他、ストレスや寝不足、疲れによる肌荒れも免疫機能・肌のバリア機能に影響を与えます。
※当院では39項目のアレルギーを一度に検査できるVIEW39を導入しております。
保険適応の検査になっていますので気になる方はお気軽にお申し付けください。
アトピー性皮膚炎では、かゆみに対してひっかき行為を行ってしまうと、皮膚のバリアが剥がれていき更なる湿疹とかゆみを引き起こすという悪循環に陥ってしまい、症状がどんどん悪化していきます。
アトピー性皮膚炎の治療には、まずはかゆみを抑えることと肌を清潔に保つことが重要です。当院では外用薬とスキンケア指導を組み合わせてまずは寛解導入するところを目指します。
外用薬はやステロイド外用薬などを中心にアトピー性皮膚炎の治療に対して効果が認められたプロトピック軟膏やコレクチナム軟膏、モイゼルト軟膏といった専用の治療薬を処方していきます。
外用薬はアトピー性皮膚炎の症状に合わせた適切な強さと量を塗布することが大切です。症状が改善してきたら、プロアクティブ療法を行っていきます。
プロアクティブ療法とは何度も繰り返す湿疹に対して、ステロイド外用薬などを週2回など定期的に塗る方法です。アトピー性皮膚炎では発症が一旦おさまり、一見正常に見える皮膚でも、内部には炎症が残存し、再び炎症を引き起こしやすい状態にあることが多いです。そのため、当院では外用指導をしっかり行うことを大切にしています。
外用薬だけでなかなか改善が難しい場合は下記の治療法を当院では採用しております。
当院ではアトピー性皮膚炎のなかなかおさまらないかゆみに対して、308~313nm波長の紫外線を照射できるエキシマライトを3台導入しております。紫外線にはかゆみを引き起こす免疫機能を抑える働きがあります。紫外線療法と外用薬治療を併用することでより治療効果を得ることができます。
週に1~2回、短時間照射することで高い効果を得ることが出来ます。保険適応の治療法ですので無理なご負担なく続けることができます。
<紫外線治療対象外の方>
光線過敏症のある方、皮膚悪性腫瘍の合併・既往のある方、免疫抑制剤内服または外用中の方
また、近年以下の新しい治療法が増えました。各々、適応基準があるため満たす方の治療となります。初診時から投与することはできません。
デュピクセント®は、「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑えることで、Th2細胞による炎症反応をおさえる新しいタイプの注射製剤です。
今までの治療で十分な効果が出なかった、中程度以上のアトピー性皮膚炎の患者さんにお使いいただけます。効果が非常に高く症状の改善が大きく期待できる新しい薬として注目されています。
デュピクセント®は投与開始日のみ2本を皮下注射します。その後は2週間に1回1本を皮下注射します。
最初は院内で注射を打ちますが、その後はご自身で自宅において注射していただけるよう指導します。デュピクセント治療を当院で導入、その後自己注射への移行はスムーズに皆様できています。
<デュピクセントを受けることができる方>
①15歳以上でアトピー性皮膚炎の方
②IGAスコア3以上、EASIスコアが16以上または顔面の広範囲に強い炎症を伴う湿疹を有する方
③ステロイド外用薬・プロトピック軟膏などを一定期間投与しても十分な効果が得られず。強い炎症を伴う湿疹が広範囲に及ぶ方
非常に効果の高い治療法ですが、その分医療費が高額になっています。
薬の価格が1本あたり58,775円と高価な薬となります。しかし保険適用ですので、3割負担の方で17,632円 1割負担の方で5,877円が自己負担分です。治療を続けるには高額なため医療費助成制度を活用することもご検討ください。
※初回は2本投与 → 3割負担の方は35,265円
1割負担の方は11,755円
下記に当てはまる方は投与に際して注意が必要です。
・寄生虫感染のある方
・生ワクチン接種の予定がある方
・妊婦又は妊娠の可能性がある方
・授乳中の方
・高齢の方
・喘息等のアレルギー疾患をお持ちの方
2022年の8月にアトピー性皮膚炎の治療に新たな選択肢としてミチーガが発売されました。ミチーガはアトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとする生物学的製剤です。ミチーガはデュピクセントと同じように、従来の外用薬だけでは治療が難航している場合にのみ使用が可能になります。
ミチーガはかゆみを脳に伝える働きを持つ受容体に結合されるので、かゆみ自体をなくすことができる新しいタイプの製剤です。かゆみがなくなることで、アトピー性皮膚炎の症状が悪化するサイクルを断つことができます。
<ミチーガを受けることができる方>
従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬(ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等) および抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用して、治療を一定期間行ってもかゆみが改善しない13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できます 。
▼詳しい説明はブログで
アトピー性皮膚炎の新しいお薬「ミチーガ」について
アドトラーザはトラロキヌマブを有効成分とする生物学的製剤であり、IL-13に対する中和抗体として作用します。
この薬は主に重症のアトピー性皮膚炎の患者に対して使用され、皮下投与が行われます。
初回は600mg、以降は300mgを2週間ごとに投与するスケジュールが一般的です。
この薬の特徴として、IL-13がリンクしている受容体にアプローチすることで、アトピー性皮膚炎の症状を緩和します。
注射部位の反応などが副作用として報告されていますが、重篤な副作用は比較的少ないです。
イブグリースはレブリキズマブを有効成分とした生物学的製剤で、特にIL-13に結合するモノクローナル抗体です。
この薬剤は、従来の治療法では効果が不十分な成人や12歳以上の小児アトピー性皮膚炎に使用されます。
投与は初回と2週後に500mg、以降は250mgを2週間ごとに皮下投与します。
イブグリースの重要な特徴は、IL-13に対する高親和性を持つことにより、アトピー性皮膚炎の炎症を抑制する点です。
2024年5月から在宅時効注射が可能になりました。
アトピー性皮膚炎の治療には内服薬での治療もあります。『リンヴォック』や『オルミエント』はJAK阻害薬と呼ばれており、免疫をつかさどる細胞の中にある、「JAK」という部分に結合し、かゆみの原因となる炎症性サイトカインが過剰に作り出されることを防ぎます。炎症の信号を伝える経路のひとつであるJAK-STAT経路をブロックすることで、サイトカインが受容体にくっついても炎症やかゆみを引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、アトピーのかゆみや炎症を抑えます。
皮膚の内部の炎症を抑えることで、皮膚の表面に表れる炎症やかゆみの改善が期待されるお薬です。
12歳から使用可能なため、小児の患者さんから服用できます。
リンヴォックは1日1回、毎日服用します。服用時間の制限はありませんので、生活スタイルに合わせた時間帯に飲むことができます。
15歳以上から服用が可能です。
オルミエントは1日1回、毎日服用します。服用時間の制限はありませんので、生活スタイルに合わせた時間帯に飲むことができます。
リンヴォックやオルミエントは、全てのアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できるわけではありません。
従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬(ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等) および抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用して、治療を一定期間行っても症状がなかなか改善しない中等度〜重度アトピー性皮膚炎の患者さんに適応があります。
妊娠中や妊娠の可能性のある場合は服用できません。また、リンヴォック服用中は授乳しないことが推奨されています。
<処方できる施設要件>
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医が常勤していることが必要です。当院は院長、副院長ともに皮膚科専門医です。
▼詳しい説明はブログで
アトピー性皮膚炎の新しい治療薬「リンヴォック」と「オルミエント」
サイバインコはアトピー性皮膚炎の治療に使用されるJAK阻害薬です。
この薬剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の働きを阻害することにより、炎症を引き起こすサイトカインのシグナル伝達を抑制します。
これにより、免疫細胞の活性化や炎症が減少し、アトピー性皮膚炎の症状が改善されます。
サイバインコは、1日1回服用する内服薬であり、服用時間の制限はありません。
また、投与開始後、比較的早い段階から効果が現れることが期待され、効果が12週間以内に得られない場合は中止が考慮されることがあります。
さらに、サイバインコは症状の改善に加えて、感染症にかかりやすくなる可能性があるため、使用する際には定期的な血液検査が必要です。
この薬剤は一部の患者には効果的ですが、妊娠中の方や肝機能障害のある方には使用が禁忌とされているため、必ず専門医の診断を受けることが求められます。
プロトピック(一般名: タクロリムス)は、ステロイド剤ではなく、アトピー性皮膚炎に対して有効な外用薬です。
炎症を引き起こすメカニズムを抑えることができ、長期間使用しても副作用が少ないとされています。
プロトピックは主にミディアムからストロングクラスのステロイド外用薬と同等の効果があり、皮膚がピリピリする場合にはモイゼルトやコレクチムが代替されることがあります
プロトピックは刺激感が起こることがあるため、特に塗布開始から約1週間での刺激やかゆみなどの症状に注意が必要です。
コレクチム(一般名: デルゴシチニブ)は、アトピー性皮膚炎に適応した世界初の外用JAK阻害剤です。
通常、成人には0.5%製剤を1日2回、患部に塗布します。
塗布量は1回あたり最大5gまでとされており、小児にも使用可能です。
コレクチムは、炎症を引き起こすシグナル伝達経路を阻害することによって効果を発揮します。
0.5%製剤が16歳以上、小児の0.25%製剤は生後6ヶ月以上に使用ができ、軽度から中程度のアトピー性皮膚炎に対して有効とされます。
モイゼルト(一般名: ジファミラスト)は、2023年に発売された新しいアトピー性皮膚炎の外用薬です。
この薬はPDE4阻害薬であり、特にアトピー性皮膚炎によるかゆみを改善する効果があります。
モイゼルトは一回の使用量に上限がなく、皮膚刺激感が少ないため、長期間の使用が可能です。
1%製剤が16歳以上、0.3%製剤が2歳以上に使用でき、妊娠中の女性には使用しないことが望ましいとされています。
ブイタマー(タピナロフ)は皮膚用の外用剤で、特定の受容体(AhR)を活性化することでアトピー性皮膚炎の皮膚症状を改善します。
この薬は、従来の治療法で効果が現れない場合に適応されることが多いです。
ブイタマーは2024年10月に発売されました。
皮膚のバリア機能を強化し、炎症反応を軽減することが期待されており、アトピー性皮膚炎に対して長期的で持続的な効果を発揮します。
アトピー性皮膚炎の症状と上手く付き合っていくには日頃のスキンケアも非常に大切です。
・皮膚を清潔にし、優しく洗い流しましょう。
汗はかいたままにせず、こまめにシャワーで洗い流すか、濡れたやわらかいタオルで拭き取りましょう。また、身体を洗う際にはタオルなどでゴシゴシと洗うのではなく、手で石鹸を泡立ててから優しくぬるめのお湯で洗い流すようにしてください。
・爪は短く切りましょう。
・肌の水分を保ちましょう。
シャワー後はそのままにせず、肌の乾燥を防ぐためにも保湿剤を塗り肌の水分を保つ用意しましょう。
・紫外線対策を行いましょう
太陽の紫外線は有害なので、紫外線が強い時期は、直射日光を避けるようにすることや肌に合った日焼け止めを塗ってしっかり対策を取るようにしましょう。
●悪化因子の対策
・ダニやカビなどのハウスダストは部屋をこまめに掃除し、取り除きましょう。
・布団乾燥機をうまく活用したり、シーツや枕カバーは清潔に保ちましょう。
・花粉症のある方は花粉皮膚炎も悪化しやすいため、花粉対策が必要です。
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:30~12:30 | ● | ● | - | ● | ● | ● | - |
14:30~18:00 | ● | ● | - | ● | ● | - | - |
【休診日】水曜日・土曜午後・日祝日
直接来院での受付時間は午前は9時15分~12時30分、午後は14時15分~17時です。
土曜日と平日の16時以降は混雑致しますのでご了承ください。
また平日16時以降は医師1名での診察となります。
※木曜日は最終受付を17:00から17:30までと30分延長させていただきます。